文字起こしを学ぼう

2018.09.27

文字起こしを学ぶには

文字起こしは、実務に就く前に学んでおくことが必須です。
多少例外もあります。先に「必須でない」場合についてご説明しますね。そのほうが「必須」の理由が理解しやすくなるためです。

 

◆学習が必須ではない場合とは

  1. 自分のために文字起こしする
  2. 特定の身近な人のために文字起こしする

1の「自分のため」は、ライターが取材に行き、その取材内容を自分で文字起こしする場合などです。
自分さえ分かればOKですから、ことさらに「仕様」「表記」「整文の加減」などと言い立てる必要がありません。

2の「特定の身近な人のために文字起こしする」は、家族や友人がライターや小説家などで、取材音声の起こしを頼まれる…(レアケースに思えますが、東京という地の特殊性なのか、私は周囲でときどき見聞します)。
この場合も、相手の注文に合わせればOK
「研究室の大学院生が、教授が聞き取り調査した音声の起こしを頼まれる」なども同類です。
会社員が、社内の会議を業務の一環として文字起こしする場合も、その会社独自の起こし方や言葉の整え方に従えば大丈夫です。

 

◆学習が必須の場合とは

「自分のため」と「特定の身近な人のため」以外の全部です。
具体的には、

・文字起こしの会社の登録スタッフになって仕事をしたい場合
・クラウドソーシング系のサイトで仕事を受注したい場合
・さまざまな企業や役所などから直請けしたい場合

…ということになります。

 

◆みんなで分担するため

文字起こしの会社には、大勢の在宅スタッフが登録しています。1案件が音声何十時間分もあるような大型案件は、みんなで分担して起こします。
ところが。

!や?をたくさん使う人、
平仮名を多用する人、
言い間違いまで口調どおりに再現したい人、
強い整文を好む人 など、
文字化の志向はもともと十人十色です。

人によって全然違うトーンの原稿を作ってしまうと、1案件の記録としてのまとまりがありません。原稿に個性を出さずに、お互いに同じような起こし原稿を作れることは、メンバーの一人という立場で文字起こしをする場合に大切なのです。

会社によって少しずつ仕様が異なりますから、スタッフ登録してからその会社の好みや方針を学ぶことになりますが。
事前にある程度学んでおけば、その学習内容と比較して「ここは同じ」「ここは違う」と、登録先の仕様を理解しやすくなります。

 

◆文字起こしを知らない人のため

「クラウドソーシングの利用」や「直請け」では、発注者は文字起こしのことをよく知らないのが普通です(一般企業や普通の役所ですから、当然ですね)。
「ここはどのように処理すればよろしいですか?」と質問しても、「普通どうするものですか?」と逆質問されたりします。

よく使われる仕様を知っておくことは、このような場合に役立ちます。

 

◆文字起こしの学習方法

【独習書で学ぶ。】

私(廿里美)の本が多いので、ご紹介するのも気が引けますが…。
当okosoの「おすすめ書籍・教材」のページ をご覧ください。
いずれも、音声+仕様書+起こし例・解説がセットになった教材をダウンロードできます。
「廿さんのドリルで学びました!」と、文字起こし各社のトライアルに受かる人は結構います。
在宅ワークは自宅でひとりで仕事するわけですから、自分で学べる能力は必須ですね。

 

『国語好きを活かして在宅ワーク・副業を始める 文字起こし&テープ起こし即戦力ドリル』
廿里美 著
(Amazonのページに飛びます)

 

【通学講座やオンライン講座を受講する。】

通信教育講座やオンライン講座は、私が講師を務めるフラウネッツ文字起こしオンライン講座 以外にもあります。
厚生労働省や各自治体が実施する講座も、まれに開催されます。集合研修のみで実施される講座もあれば、集合研修と自宅で取り組むオンライン研修を組み合わせた講座もあります。
地元で開催されていたら、ぜひ受講してみてください。
将来の年金財政が危ない上に、現在の労働力不足ですから、役所も就業支援は必死です。

okosoも開催情報はできるだけ掲載します。地元の開催情報をお持ちの方、ぜひご一報くださいね。

【動画サイトのコンテンツを起こす?】

文字起こしする内容は、会議、講演、インタビュー、座談会などです。
こういったものは、ネット上の動画コンテンツにもありますから、起こしてみれば勉強になるという発想もあると思います。

ただ、これらには起こし方の「正解」が示されません。
!や?をたくさん使う人、平仮名を多用する人、言い間違いまで口調どおりに再現したい人、強い整文を好む人…といった、人それぞれの癖があるということは上に書きましたが、自分の起こし方がどうなのかは、正解が示されないので判断できません。

動画と原稿を対比して見比べられるコンテンツとしては、国会(衆議院・参議院)や地方議会(都道府県議会、市町村議会)があります。文字の会議録と動画の両方がネット上で公開されている場合が多いからです。
役所の動画は、厚生労働省動画チャンネルなどもありますね。

そもそも、日本には表現の自由があります。どう起こそうが、本来は自分の勝手です。
ある仕様が示された場合に、それに従って起こすことが、その仕様に対して「正解」なのです。

文字の議事録と動画の両方が公開されていても、仕様書はさすがに公開されていません。どういう仕様書に基づいて議事録が作成されているかは、やっぱり分からないわけです。

そういう限界はあっても、リアルなトークを聞き取ること、手を動かして文字化してみることは、大切な練習になります。

※動画サイトのコンテンツをダウンロードするのは、動画サイトの規約などでどうなのか、私には判断できません、念のため。単に再生して見る(聞く)だけでも勉強になります。ちなみに私自身は、動画サイトがない時代に文字起こしをスタートした人間ですから、動画を文字起こしの練習に使った経験はありません。

【検定は?】

『文字起こし技能テスト』 があります。
合格・不合格ではなく、1000点満点のスコア制で習熟度を評価するものです。
自宅で、使い慣れたPCで受験することができます。

公式テキストなどが発売されています。
音声や仕様書をダウンロードして練習・採点できますから、公式テキストに取り組むこと自体が、有効な文字起こし学習方法の一つといえます。

『文字起こし技能テスト 公式テキスト 改訂版』
(Amazonのページに飛びます)

【「適切な原稿」を目指して学ぼう!】

ライターが「仕事の幅を広げよう」と、文字起こしへの進出を目指すことがあります。
ところが、文字起こし会社の在宅スタッフ募集では、ライターはトライアルに受かりにくい傾向のようです(数社に聞いたところ、共通していました)。
自分の執筆用に起こしてきたので、一般的な文字起こしの決まりを知らないためと思われます。

国語力があり、起こしの経験が豊富な人でも、文字起こしは文字起こしとして学ぶというプロセスを経ないと、トライアルを突破しにくいわけですね。

適切な文字起こし原稿というものは存在します。ほぼ発言どおりで大きく手を入れてはいないのに、全体として読みやすいのです。
そんな原稿を目指して、ぜひ学んでみてください。