録音・録画の知識

2018.09.27

ICレコーダーのセッティング(規模の大きい会場)

ICレコーダーのセッティングについて、今回は、規模の大きい会場での会見や講演の録音方法を取り上げます。

◆事例:記者会見の写真を見てみよう

鳩山元首相のブログ「鳩cafe」に、「記者会見のオープン化について」という記事が掲載されています。
(2010年の記事ですが、2018年現在まだアップされています)
こういうホールでは、どのようにICレコーダーをセッティングしたらいいのでしょうか。
鳩山元首相のブログ「鳩cafe」へリンク
ブログの写真を見ると、記者は自分の席で録音していることが分かります。いくつかICレコーダーが写っています。
会場のセッティングを見てみましょう。鳩山首相の声はマイクを通しており、スピーカーは左右前方にあるようです。この会場なら人間の耳には音響上の問題はなく、どこに座ってもよく聞こえると思います。

しかし、ICレコーダーは、「内蔵マイクに近い音をより強く拾う」のです。鳩山さんの声よりも、隣の席の記者がパソコンでタイピングしている音を、ICレコーダーは強く拾ってしまうかもしれません。もし後で文字起こしをするなら、録音に最強な位置に座る必要があります。

 

◆広い会場で・マイクを通した声を・座席から録音する場合のセッティング

・スピーカーにできるだけ近い席に座る。
・ICレコーダーの指向性を「NARROW」などにして、レコーダーをスピーカーに向ける。
これによって、スピーカーの方向から来る音をメインに拾い、隣の席のタイピング音などはちょっと小さくなるはずです。
指向性の設定はレコーダーの機種によって異なります。シーンセレクトで設定する機種であれば「会議」「インタビュー」「商談」などよりは「講演」を選択します。
例)オリンパス DS-901の場合

オリンパス DS-901の画像「低(メモ)」・「中(会議)」 ・「高(講義)」

メニュー「録音レベル」で選択します。それぞれの指向性の違いを見ると、
・「低(メモ)」だと広い範囲を大ざっぱ(?)に狙い、
・「中(会議)」は「低」より狙う範囲が多少狭まる。
・「高(講義)」はレコーダーの正面の狭い範囲だけを狙う。
「高(講義)」を選んで、レコーダーをしっかりスピーカーに向けましょう。

一方、主催者から依頼されて録音する場合は、音響機器からダイレクトに録音させてもらうことができます。会場の雑音が入らずクリアに録音できます。
鳩山会見のホールでは、後ろの上のほうに音響ルームがありそうですね。内閣府のウェブサイトにアップするような正式な音声や動画は、そちらで録音・録画をオペレーションしているはずです。

 

◆広い会場で・マイクを通した声を・機材から直接、録音する場合のセッティング

・音響担当者に機材からの録音を依頼する。
録音に行ったら、会場の音響担当者を探します。
「主催者の依頼でテープ起こしを担当する者ですけど、ラインから音をいただけますか」

こういう言い方で通じます。音響さんは、機器から出ているコードをICレコーダーにつないでくれるので、あとは録音ボタンを押すだけです。この場合も、予備の録音機材で自分の席から録音しておきます。
(昨今は、「ライン」と言うとメッセージアプリ「LINE」と間違えられてしまうことがあります。音響さんは大丈夫だと思いますが、エージェント会社が間に入っている場合、その担当者が誤解することがありそうです。「ケーブルから」「機材から直接」などが言い換え例です)

音響担当者がライン録音までを行う場合もあります。イベント後に音声ファイルを送ってもらえるよう、事前に打ち合わせをしておきましょう。
USBメモリの使用はセキュリティ上禁止という会社も昨今は多いですが、もし禁止でなければ、会場で音響担当者に音声ファイルをUSBメモリに入れてもらうこともできます。

◆広い会場で・マイクを通さない声を録音する場合のセッティング

そこそこ大きい会議室での講演などでも、マイクが使われないことがあります。この場合はとにかくレコーダーを話者に近づけること。
方法1・演台の上にICレコーダーを置かせてもらう
方法2・講師のジャケットのポケットにICレコーダーを入れてもらい、襟元にピンマイクをはさんでもらう

最初は演台の前で立ってしゃべるが、途中でスクリーンの前へ移動し、スライドを示しながらしゃべる…などというケースでは、方法2が最適です。
この場合、必ずピンマイクを接続して使うこと。ピンマイクなしでポケット内のレコーダーで録音すると、「近いものを強く拾う」というレコーダーの特性のせいで、講演者が身動きするたびポケットの衣ずれが「ザザザーッ!」と意外な大音響で入ってしまい、声が聞こえません。

※講演者が女性の場合、ICレコーダーが入るほど大きなポケットが服にありませんから、方法1しか使えません。そもそも広い会場でマイクを使わないのが無謀なのであって、事前に主催者と打ち合わせができるなら、マイクのセッティングを依頼しましょう。