テープ起こし・音声起こしの総合情報サイトokoso | 上手な録音起こし方の基本

上手な録音起こし方の基本

このコーナーは全然予定通り進んでいない。今回の脱線は、音声認識の話。案外緊急だろうと思うからだ。

 

検索サイトからokosoに来るとき、どんな言葉で検索してたどりついているかを見ると、こんな一群がある。

「音声文字化ソフト」「音声を文字に変換するソフト」「ICレコーダー 文字化」「会話を文字化するソフト」「自動音声テキスト変換機能」「ICレコーダー 文字変換ソフト」「ICレコーダー 自動 変換」「自動音声 テキスト化 導入」

 

録音したままの音声では一覧性・検索性が低いことに、多くの人が気づいている。なんとか文字化、文書化したいと思っている。そのための情報を探しに来てくれているのだ。一字一句入力するのはあまりに重労働。21世紀なのだから何か自動化ソフトがあるだろうと。

 

しかし残念ながら、音声認識ソフトはほとんどの場合まだ実用的とは言えない。少なくとも、講演や会議などの自然なしゃべりを文字化する技術は、十分とは言えない。
Wikipediaの「音声認識」の項にも、「音声認識システムの研究開発にはコンピュータが普及しだした1970年代から21世紀初頭の現在まで、長年にわたって莫大な資金と優秀な人材が投入されてきたが、成功して普及したものはほとんどなく」とあって、本当にため息状態なのだ。

 

従来、一般ユーザー向きに発売されていたのは、ViaVoiceとドラゴンスピーチ(正式名称 Dragon NaturallySpeaking)だった。
このうち、ViaVoiceは2005年以降は新しいバージョンが発売されず、結局2009年8月に生産終了となった。ドラゴンスピーチはまだ市販されているけど、こちらも最新(?)バージョンは2005年のもの。
どんどん売れればさらに開発に資金が投入されて、さらに高性能な新バージョンが発売されるというのがPCソフトの世界だから、音声認識ソフトがいかに苦戦しているかが分かる。

 

今一番頑張っている音声認識ソフトはAmiVoiceだと思う。それでも、「AmiVoice Es 2008」の「ICレコーダーによる音声ファイル文字化の使用条件」によると、
口元とマイクの距離が5cm以内で録音した音声で、かつ、はっきりとした音声であることが条件となります。
複数の会議および講演会などで、マイクの距離が遠い場合"AmiVoice Es 2008"で文字起こしすることができません。

というわけで、録音した音声そのものを自動で文字化するには、かなり制限がある。「録音した音声を聞きながら、ヘッドセットマイクなどに向かって復唱する」という方法での音声認識なら可能だという。
(その2に続く)

録音当日の準備といえば、もちろん録音機材のセッティング。でも今回は、録音以外の準備について取り上げたい。目立たないが大事な仕事ばかりだ。録音し発言記録も取る担当の人を、ここでは「記録者」と呼ぶことにする。

 

【講演などの場合】
1)録音して記録を作成することに関して、事前に講演者の了解を取っておく

 

講演など話者が基本的に1名の場合、事前の準備は大がかりではない。これに対して、会議や座談会など話者が多い場合は作業が多いので、早めに会場入りしよう。

 

【会議や座談会などの場合】
1)出席者の各座席にネームプレートを置く
2)記録者席に座席表を置く
3)司会者に出席者への注意を依頼する
4)記録席に時計を置く

 

一つひとつ見ていこう。

 

1)出席者の各座席にネームプレートを置く

 自立するプラスチックタイプがあれば一番だが、なければコピー用紙を四つ折りして左右からクリップではさめば出来上がり。エアコンの風に直撃されると動いてしまうので、大きくて重いタイプのクリップを使うこと。

name1.jpg  name2.jpg

 縦型のネームプレートの方が場所を取らないが、エアコンの真下で実験したら、クリップ2個の重みがあっても倒れてしまった。縦型を使う場合はコピー用紙ではなく厚紙などで作ろう。

 name3.jpg

 会議や座談会では、声が大きく態度が積極的な人がたくさん発言してしまい、控えめな人がしゃべれなくなることがある。そんなとき、縦型のネームプレートを活用するという進行方法がある。
 ネームプレートを寝かせてセットしておき、「意見や質問のある人はプレートを立てて合図する」というルールで会議を進行させるのだ。自分の前のプレートを立てるだけだから控えめな人にとって楽な意思表示だし、座長にとっても指名しやすい。

 


2)記録者席に座席表を置く
出席者の席が決まったら、記録者は座席表を書いて自分の席に置く。
・同じ姓の出席者がいたら発言記録を取るときの表記を決めておく。「田中1」「田中2」など。
・漢字の正しい表記を確認しておく。いわぶちさんは「岩淵」か「岩渕」かなど。
・漢字の読み方を確認しておく。茂木さんは「もてぎ」か「もぎ」かなど。

 「参加者が特に多い」「会議室が広く遠い席のネームプレートが読めない」「一つひとつの発言が短く、名前で記録していたら間に合わない」などの場合は、座席表に番号を振って、その番号で記録する。

 zasekihyo.jpg 

 

3)司会者に出席者への注意を依頼する
 3-1 司会者が「××さん」と指名してから発言すること
 3-2 二人以上が同時に発言しないこと(3-1が守られれば不要な注意のはずだが…)
 3-3 途中で席を移動しないこと
 3-4 録音機材にさわらないこと

 

 以上4点を出席者に伝えてもらう。3-1と3-2は、文字起こし用の注意。誰の発言か分からなかったり、二人以上が同時にしゃべっていたりすると、起こしにくい。
 3-3は、座席表と実際の席が違うと発言記録を間違える危険があるため。
 3-4は、次のようなトラブルを防ぐため。
・「これに録音してるの?」と手に持った人が、うっかり機材を落としてしまう。
・知らずに録音停止ボタンに触っていて、それ以降が録音されない。
・ICレコーダーの向きが変わってしまい、ステレオ録音で右から聞こえていた人の声が途中で左から聞こえて、起こす際に混乱する。

 

4)記録者席に時計を置く
 会議では、開始時刻・終了時刻の記録は必須だ。録音中もときどき時計を見て、発言者メモに現在時刻を書いておくと、特定の発言を後で音声から探すときなどに便利。

今のところ、音声の自動文字化技術は万全ではない。音声を文書化するには人間の国語力とタイピング力が必要になる。

 

● 国語力:句読点、段落替え、同音異義語


録音されたしゃべり言葉は単なる音であって、句読点も段落替えも付いてない。どこに「、」を打つか、どこで段落替えするかは、小学校以来の国語力が物を言う。
同音異義語も、間違えると目立つ。どんな漢字を当てはめるかは、起こす人の知識次第。

次の文章には6カ所の漢字の間違いがある。見つけてみよう。こんな文章を発表したら、その組織全体の能力が疑われてしまう。

 

上々会社の責任は重いのです。内部統制に関する精度も加わり、従業員が不正を侵すリスクなど、さまざまなリスクに適格に対応しなければなりません。また、監査法人がいかに適性に鑑査をしているかも問われています。

 

「えっ、漢字の間違いなんて見つからない」という人は、起こしはちょっと無理かも。録音の方を担当しよう。たちどころに6カ所全部を指摘できた人は、チェッカーになれる。メンバーから上がってきたデータを校正して仕上げる係だ。その中間の人が起こしを担当しよう。

 

チェック!
みんなで漢検2級の問題集をやってみよう。漢字の使い分けをよく知っている人は?

 

● タイピング力:正確さと速さ


音声1時間を「えっと」「あのー」などのケバを取って文字化すると、通常1万6000~2万字にもなる(要約して起こすなど文書化のパターンはいくつかあるが)。
誤入力だらけでは誰も読まない。タイピングが遅いと本人が残業続きになってしまう。正確さと速さを両立できる人がテープ起こしに向いている。

 

チェック!
みんなで自社ホームページの「社長挨拶」を入力してみよう。誤字がなくしかも入力が速い人は?

 

国語力とタイピング力は、その組織における経験年数を問わない。新人や派遣社員などに素晴らしい適性を示す人がいるかもしれない。

1.ハードとソフトの準備

2.起こし担当者を決める(校正クイズ)

3.ICレコーダーを選ぶ際のポイント

4.当日の準備

5.録音機材のセッティング

6.録音中の作業

7.音声を起こす

8.起こしソフトの操作

9.文字化のルールを決めておく

10.起こす必要のない語(ケバ)

11.発言を整える(整文)

12.記録・記事としてまとめるには

自分で録音して起こすために、まずは必要なハードとソフトを準備しよう。

・ICレコーダー
・音声を起こすソフト
・ヘッドホン

とりあえず、以上3点があればOK。

 

● ICレコーダー

録音用。できるだけ2台用意する。

(ICレコーダーの選び方については、連載「ICレコーダーを骨までしゃぶる」をどうぞ) 

 

● 音声を起こすソフト


<Windowsの場合>

 

・Voice Writing

basic_img_01.jpg

 

(フリー版と高機能の有料版がある。ボイススピリッツ社。XP・Vista・7に対応)
http://voicespirits.co.jp/

 

・Okoshiyasu2

basic_img_02.jpg

 

(フリーウエア 作者:Mojo氏 公式にはVista・7非対応だがほとんどの場合動作する)
http://www12.plala.or.jp/mojo/

 

<Macintoshの場合>

 

・Pardon?

(シェアウェア 作者:永野靖忠氏)
http://www.vector.co.jp/soft/mac/edu/se220059.html

 

 

【 起こし専用の音声ソフトを使うメリット 】

音声の再生にWindows Media Playerを使用してテープ起こしを行うことは、あまりおすすめできない。再生・停止を行うたびに、キーボードからマウスに持ち替えなえればならないからだ(一応ショートカットキーもあるが)。しかも、マウスでは「数秒巻き戻して聞き直す」ような微妙な操作がやりにくい。
これに対してテープ起こし専用の音声ソフトは、再生・停止をキーボードで行える。また、停止したとき自動的に数秒戻るよう設定できる。フットスイッチ(フットペダル)別売のものもあり、これを使って音声の再生・停止を行えば、手はタイピングに専念できる。

 

 

● ヘッドホン

iPod売り場などの安いものでもOK。
音声が聞き取れないとしたら、録音状態が悪いか、耳が聞き取りに慣れてないかのどちらかだ。
ヘッドホンのせいということはめったにない。ただし、100円ショップのヘッドホンはさすがにちょっと聞きにくいかも。

 

basic_img_03.jpg

basic_img_04.jpg

 

実際に音声を起こしてみよう。

第1回の起こし練習サンプルはインタビュー(3分)。音声を起こすソフトについては、第1回ハードとソフトの準備参照。

 

音声はこちら→ DM200015.mp3(右クリックして「対象をファイルに保存」)

音声情報

 音声長さ:約3分、 話者数:2名、 録音状態:良好

 

自分の仕事で使いそうなパターンでチャレンジしてほしい。

起こし方のパターン

 1)できるだけしゃべりに忠実に再現する。

 2)「えっと」「あのー」などの無意味語(←ケバという)を削除して起こす。

 3)整理して要約する。

 

起こし例の発表は、目標スケジュール2月上旬。

「社内報用のインタビュー起こしを押しつけられて…。残業しても終わらなかった」

「座談会を録音したけど、あとで聞くと誰がしゃべっているのかわからない」

「しゃべったとおりに文字化したのに、なんだか読みにくい」

 

やっぱり、起こしは外注するしかないの? 自分たちでは起こせないの?

そんな質問を受けることがあります。

もちろんご発注いただければ私はうれしいですが、大丈夫、あなたにも起こせます。録音機材や起こし用音声ソフト、ちょっとした録音テクや起こしテクを知ることで、劇的に音声起こしはラクになります。

 

ふだんの職場に生かすテープ起こし、学んでみませんか。

 

廿 里美